今、日本人の健康を脅かしている「睡眠負債」の存在を知っていますか?ビジネスパーソンや子育て中の女性など、毎日忙しく過ごしている人は、気づかないうちに睡眠負債をため込んでいるかもしれません。「自分の体のことなんて、考えているヒマがない!」なんて無理を続けていると、恐ろしい病気にかかりやすくなるうえに、美容の面でもマイナスなことばかり。気づいたらすっかり老け込んでいた、なんて事態になりかねません。今回は、そんな睡眠負債によって引き起こされる症状やリスク、そしてちょっとした心がけで睡眠負債を改善できる方法をご紹介します。
そもそも、睡眠負債とはどんな状態のことを言うのでしょうか?実は気づいていないだけで、あなたも睡眠負債をため込んでいるかもしれません。ますはその症状について知っておきましょう。
いわゆる睡眠不足とは、睡眠が足りない状態が短期間の場合です。つまり、いつもはしっかり寝ているけど「昨日は2時間しか寝てないのよね」というのは睡眠不足です。
ですが、それが毎日になってくると睡眠不足が借金のように積み重なり、「睡眠負債」の状態になってしまいます。ここで気をつけたいのは、睡眠負債の状態は気づきにくいということ。自分のベストな睡眠時間が7時間だとして、毎日6時間しか寝ていなければ、それは睡眠負債が積み重なっているのです。
今、日本人の睡眠時間はどんどん短くなっていますから、「毎日5〜6時間寝ていれば十分でしょ」なんて軽く見ずに、1日の疲れはその日のうちに睡眠で修復するよう心がけることが大切です。
睡眠負債の怖いところは、昼間眠くなったり注意力が低下するだけでなく、さまざまな病気にかかりやすくなるということです。とくに、うつ病やがん、高血圧、認知症などは睡眠負債が引き起こす代表的な病気です。東北大学の研究によると、平均睡眠時間が6時間以下の女性は、7時間寝ている女性に対して乳がんのリスクがおよそ1.6倍も高くなることが分かりました。
このように、睡眠負債は心と体にとても大きなダメージを与えるのです。眠気はカフェインで吹き飛ばす!なんて無謀なことはやめて、まずはしっかりと睡眠時間を確保するようにしましょう。
ここまで、睡眠負債が引き起こす病気についてお話ししましたが、もちろん女性にとって大切な「美容」の面でも、マイナスなことばかりです。気づいたら残念なお肌や体型になっていた・・なんて事態にならないよう、睡眠負債が及ぼす美容への影響を知っておきましょう。
・太りやすくなる
睡眠が足りていないと食欲をコントロールすることができなくなり、太りやすくなることが分かっています。
米スタンフォード大学の実験によると、5時間しか寝ていない人は、8時間たっぷり寝た人に比べて、食欲がわく「グレリン」というホルモンが約15%多く分泌されることが分かりました。しかも、眠っている時に分泌される成長ホルモンは脂質や糖質を代謝してくれる働きがあるので、睡眠時間が足りないと代謝の悪い体になってしまうのです。
それでなくても年齢を重ねるとだんだんと痩せにくい体になっていきますから、ダイエット中の人や、今の体型をキープしたい人は、睡眠時間を確保して太りにくい体質に変えていきましょう。
・肌荒れ、肌老化を引き起こす
大手化粧品会社ポーラの研究によると、3時間睡眠の女性の肌は6時間睡眠の女性に比べて水分蒸発量が多いことが分かりました。つまり、肌の水分が保たれずにカサカサになっていくということです。
私たちの肌は、紫外線やほこり、ウィルスなど毎日たくさんの刺激にさらされています。そういった刺激によるダメージを、眠っている時に修復しているのです。肥満を防ぐとお話しした成長ホルモンは、眠っている間に傷ついたお肌を修復したり、新しく生まれ変わらせる働きもしてくれます。
つまり、毎日しっかり睡眠をとらないと肌のダメージが回復されず、肌荒れやニキビ、シミやシワなどあらゆる肌トラブルの原因になります。いつまでも若々しい肌を保ちたい人は、高級化粧品よりも、たっぷりの睡眠が必要なのです。
・休日の寝だめ
平日の睡眠不足を休日でとり戻す!と休みのたびに昼まで眠っている人、実は逆効果になっているかもしれません。人間は、朝起きて朝日を浴びることで覚醒します。そして、15時間〜16時間後に眠くなるという一定のリズムがあるのです。
ですが、休日に昼間まで眠っていると体内のリズムが狂い、平日の睡眠に支障が出てしまうことがあります。もし休日にたっぷり眠りたいなら、朝遅く起きるのではなく、夜早めに寝るようにしましょう。そしてしっかり朝日を浴びて目を覚ませば、リズムをキープすることができます。
・寝る前の飲酒
お酒は、神経を興奮させるので眠る前に飲むのは避けましょう。よく寝付きが悪いと、お酒を飲むことがありますが、眠りが浅くなってしまい逆効果です。しかもアルコールは利尿作用があるので夜中に何度もトイレに行きたくなり、目が覚めてしまいます。眠る前はアルコールやカフェインを避けて、ハーブティーやホットミルクなどリラックスできる飲み物を飲むのがいいでしょう。
・寝る前の筋トレ
ダイエットのために筋トレをしている人は、夕方までに済ませておくようにしましょう。人間が眠くなるのは、一度体温が上がってから、下がる時のタイミングです。つまり、お風呂に入ったあと、徐々に体温が下がって自然と眠くなるのがベストな形なのです。眠る前に筋トレをすると、せっかく下がりかけた体温が上がり、スムーズに眠りにつけなくなります。息があがるような運動は就寝の3時間前までには済ませて、眠る前はゆっくりとしたストレッチで体の緊張をほぐすとよいでしょう。
すでに睡眠負債が溜まっている人は、一体どうやって返済していけばいいのでしょうか?解消するための毎日のちょっとしたコツをご紹介します。
・自分のベストな睡眠時間を死守する
「それができないから苦労してるのよ!」と思ったかもしれませんが、どんなに睡眠の質を上げても、圧倒的に量が足りていなければ意味がありません。とはいえ、「睡眠5〜6時間でも毎日元気!」という人もいるので、ベストな睡眠時間は人によって違います。自分のベストな睡眠時間を知るひとつの目安は、起きてから4時間後に眠気がないかどうか。もっとも目がさえやすいこの時間に眠気があれば、睡眠が足りていません。まずは少しでも睡眠時間を延ばす努力をしましょう。
・眠る前のスマホやパソコンは封印する
スマホやパソコンのブルーライトは、神経を興奮させて眠りを妨げます。ベットにまでスマホを持ち込んでいる人は、今日からその習慣をやめましょう。また、ベットで本を読むのはOKですが、その時の照明には注意が必要です。蛍光灯の白い光は目がさえてしまうので、優しい暖色系の照明でリラックスしながら眠りに入っていくと翌朝スッキリします。
・日中の昼寝はOK
どうしても眠いとき、サクッと昼寝をして眠気をスッキリさせるのはいい方法です。ただし、15分〜20分の短時間にすること。ベットに横にならずにイスに座ったまま昼寝をすると眠りすぎを防げます。日中の短い睡眠は夜に影響しないので、午後の集中力を高めるためにも昼寝の時間をつくっている会社もあるほどです。ただし、夕方以降に寝るのはNG。夜の眠りが浅くなります。
日本人の健康を脅かす睡眠負債についてお話ししました。毎日のちょっとした寝不足を甘く見ていると、命にかかわるような病気にかかってしまうかもしれません。もちろん、女性の美容にも睡眠不足は大敵です。スリムな体型、若々しいお肌を目指すのなら、まずはベストな睡眠時間を死守することが大切です。仕事や育児で睡眠時間がなかなか取れないという人も、自分の心と体のために睡眠の質と量を上げる努力をしていきましょう。